『ラオ先生が書いたインド占星術の教科書～ジェイミニのチャラ＆マンドゥーク・ダシャー』ペーパーバック（オンディマンド）の七冊目。
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A5サイズ
354ページ
インド占星術の専門書です。インド占星術の基本を理解している方を対象としています。
カップルが子供を授かるタイミングを、男女のホロスコープ、ダシャー、トランジットを用いながらシステマティックに予言する手法を詳しく解説しています。
また、子供を授かりにくいコンビネーション、処方についても解説しています。
著者の他の本と同様に、再現性の高い法則を中心に豊富な実例を用いながら実証的に解説しており、科学としての占星術を意識した力作となっています。
読者は納得しながら読み進めることができる上に、そのまま普段の鑑定にも使えます。
अथ त्रयो वाव लोका मनुष्यलोकः पितृलोको देवलोक इति सोऽयं मनुष्यलोकः पुत्रेणैव जय्यो नान्येन कर्मणा कर्मणा पितृलोको विद्यया देवलोको देवलोको वै लोकाना श्रेष्ठस्तस्माद्विद्यां प्रशसन्ति॥ ||१६||
『ブリハダーラニヤカ・ウパニシャド』（बृहदारण्यकोपनिषद）
わたしたちが住むこの地球には三つの世界があります。それらは、マヌシヤ・ローカ（人間の世界／मनुष्य लोक） 、ピトゥリ・ローカ（祖先の世界／पितृ लोक）、デーヴァ・ローカ（神の世界／देव लोक）です。お金を稼ぎ、食べ、セックスをするだけの普通の人間は、マヌシヤと呼ばれます。欲望を捨て、世のため人のために良いことをする人たちはピトゥリです。世の人々を覚醒に導き、崇高な文化の担い手になるような人たちはデーヴァと呼ばれます。
マヌシヤ・ローカは息子たちが支配する世界です。息子に恵まれない場合、カルマ（कर्म）が支配します。ピトゥリは常に世の人のためになることをしています。デーヴァ・ローカはヴィディヤー（神の知識／विद्या）が支配する世界です。デーヴァはスピリチュアルな知識を広め、世の中のために良いことを行います。ヴィディヤーが拡散され、デーヴァ・ローカが最良の世界なのはこのためです。
伝統的な社会、とりわけアジアの社会では、人間の一生には四層からできていると考えられています。
第一層は、純粋に肉体のレベルです。そこでは人間の動機は、ニドラー（安らぎ／निद्रा）、アーハーラ（生計／आहार）、メイトゥナア（セックス／मैथुन）です。この点に関して人間と動物に違いはありません。
第二層は、感情・情緒です。すべての出来事、つまり生老病死は、恐怖をもたらします。その解決策は、医学、心理学、占星術など、数世紀を経て人間が発展させてきた人間の知恵です。
第三層は、知性です。それは哲学の源泉です。そこからウパニシャッド（उपनिषद्）のような偉大な哲学、そしてどちらかというと真理を悟ると言うよりも理性により強く依存した凡庸な西洋哲学が生まれてきました。西洋哲学と違いインド哲学は永遠の真理を「見る」ことによって成立しており、それゆえにフィロソフィア（知の愛／φιλοσοφία）ではなくてダルシャナ（見る／दर्शन）と呼ばれています。
第四層は、純粋にスピリチュアルな層です。この層の探求にいそしむ人たちはどの文明でもどの国でもごく少数しかいません。
インドでは、リシ（ऋषि）たちがこれら四層すべてを統合してきました。栄光の古代インドの時代、人間として生きる目的と意味合いの永遠なる探求において、性欲の果たす役割がよく理解され、性欲は肯定されてきました。
答えのひとつは、家族の神聖な伝統を息子に継承させることです。インドでは、結婚するとすぐにどういう息子を授かるかを占星術家に質問します。質問はだいたい次のようにまとめられます。
a) いつ結婚するか？
b) いつ子供を授かるか？
c) 子供は男の子か女の子か？
d) 子供は成功者になれるか？
e) 子供は大きくなるとどっちの親に似るか？
その他の問いかけは：
a) 子供ができない兆候が男女のホロスコープにあるか？
b) 子供は遅れて授かるか？それとも子供ができないか？
c) 子供に不幸なことが将来起きるか？
これらの質問のすべてに答えるためには、10人の占星術家のチームによる5年間の努力が必要です。しかしそれでもどこからか手をつけなければいけません。それも科学的なアプローチで多くの事例を通して。
わたしは本書を次のような問いかけを念頭に置きながら書きました。
a) ヴィムショッタリー・ダシャーとトランジットによる子供の誕生のタイミング。
b) 子供を授かるまでに長い年月を要するケース。
c) 子供を授かることができない原因となる呪い、あるいは子供に不幸が降りかかる原因となる呪い。
d) 『ナーディー／ブリグ・サンヒター』からの引用（もし信頼できる記述があるなら）。ただし、詐欺的なブリグ・リーダーには気をつける。ＢＶラーマンのドゥルーヴァ・ナーディーの本に著者（ＫＮラオ）に関する信頼に足る証拠が書かれてあった。しかし本書は再現性のある占星術のテクニックを中心とする科学書である。
ＫＮラオ
1993年10月12日
ニューデリー
改訂版
初版本以来、この12年の間に、本書で公開したリサーチは世界で一番検証されたリサーチとなりました。読者のために、改訂にあたり、公開するテクニックを増やし、章を追加しました。
ＫＮラオ
2005年6月
ニューデリー
ある高齢のブラーフマン（僧侶／ब्राह्मण）からこう言われました* 。
「土星と木星が祝福しないかぎり、子供は生まれない」
わたしの母親にこれについて意見をたずねました。母親は、それを肯定しただけでなく、わたしに証明して見せました。母親は結婚と子供、そしてプラシュナ（ホラリー／प्रश्न）に関してはたいへん優れた占星術家で、わたしにとって文字通りサラスヴァティー女神（学問の女神／सरस्वती）* の化身でした。母親から教わったことをすこし紹介しましょう。
a) トランジットの土星と木星は、子供が生まれるまでの過去1年間に、5室及び5室の支配星にアスペクトしていなければいけない。彼女はこのルールを、60年前にアンーンドラ・プラデーシュ州マチリパトナムの僧侶から教わりました。これは、マハーリシ・ブリグの原則あるいは南インドではナーディーの原則として知られているものです。この方法は鉄板です。
b) この法則を使う前に個別のホロスコープで、あるいは多数のホロスコープのデータ・ベースを用いて、子供に恵まれないケースについて調査をしておいてください。それをしなければ、今回の試みはすべて無意味です。わたしの母親は二つの鉄板ルールをわたしに伝授しましたが、それは80％の確率で使えます。わたしは別の論文で子供に恵まれない場合の惑星のコンビネーションについてすでに発表しました。子供に恵まれるかどうかについて占星術が医学に勝ることが、この論文に目を通せば理解できるはずです。
c) わたしの母親は、スナップ・ショット・メソッド* を使った後にかならずナヴァーンシャ（D9）、サプターンシャ（D7）、マハー・ダシャーで結果を確認するようにと言いました。しかし本書では、紙幅の都合、スナップ・ショット・メソッドの使用に限定します。本書の目的は、占星術と占星術家をバカにしている科学者を驚かせることにあります。
アメリカの184名のノーベル賞受賞者が連名で占星術を非難しましたが、インド占星術には影響はありませんでした。しかし占星術について何も知らずに署名したノーベル賞受賞者こそが恥をかきました。しかしこの動きはインドの若い科学者を刺激し、コヴールやナーラシンハらの自称合理主義者らが宗教や占星術に組織的な攻撃を始めました。わたしは有名人を含む100例近い統計的なエビデンスを本書で披露するのは有意義であろうと考えました。
ज्योतिषामयनं साक्षाद् यत्तज्ज्ञानमतीन्द्रियम्।।
प्रणीतं भवता येन पुमान् वेद परावरम् ॥ ५॥
श्रीमद्भागवतम
五感によって感知され得ないもの、過去生と未来生の子宮に隠されているもの、それすらは占星術で知ることができる。あなたは占星術の創造者である。
『シュリーマッドバーガヴァタム』(ガルガ仙がバールラーマとクリシュナの命名をナンダ仙に請われて)
占星術家の多くは、わたしたちが最も好んで使うヴィムショッタリー・ダシャーは、おおよその結果しか出さず、正確な結果は出せないことに気づいています。それには多くの理由がありますが、主な理由を三つ挙げます。そうすることで、その限界の中で占星術家がなにに努力しなければならないかがはっきりするでしょう。
誕生時刻
占星術についてよほど敏感な家庭でない限り、子供が生まれたときの誕生時刻を正確に記録していることはありません。それは、誕生時刻を正確に記録することがどれほど重要なのかについて理解していない、あるいは無関心であることからきます。誕生時刻の精度に関していえば、わたしが知る限りドイツは他のどの国よりも信頼性が高いと言えます。アメリカの友人によれば、どんなに技術が発達しても、不注意や無関心から、母子手帳に書かれてある誕生時刻は常に5分から10分の誤差が含まれているのが普通だそうです。わたしはそれについて詳しいことは知りません。
インドの場合、問題の原因は多くの場合、農村部での出産にあります。最近まで農村部では時計すらありませんでしたので、誕生時刻を記録することがそもそもできませんでした。これは誇張ではありません。事実なのです。ですから、このような場合、惑星の度数を修正する必要が最初からありました。それは決して簡単な作業ではありません。
都市部においても、たとえ病院で出産しても誕生時刻はあいまいなことが多い。誕生時刻の根拠は、たいてい「誰かがそう言ったから…」です。看護師も女医も、母子の生命と健康に最大の注意を払っているので、誕生時刻を正確に記録することは後回しにされるのは、当然と言えば当然です。
そこで答えにくい疑問が湧いてきます。そもそも正確な誕生時刻とはなんでしょうか？ このやっかいな問題に足を突っ込むのはだれも望みません。この問題に対する最善で最も現実的な方法は、相談者の過去の出来事を検証することです。その際、相談者に出来事を言ってもらうかわりに、こちらから相談者が過去に経験したであろう出来事をいくつか挙げていきます。そのうちのいくつかが実際に起きたことを相談者が確認したら、ホロスコープの計算は正しかったと判断することができます。その上で、ようやく晴れて、そのホロスコープで正確なプレディクションを行うことができます。
手順は次の通りです。相談者は、自分の背景について占星術家に２～３を伝えるだけで十分です。占星術家が独力で、相談者の過去からさかのぼって現在の問題までトレースできることが理想です。もし占星術家にそれができないとしたら、占星術家は占星術を正しく学んでこなかったことになります。しかしもし占星術家が、相談者の過去について完璧にトレースしたにもかかわらず、ホロスコープが過去の出来事を正確に反映していないとしたら、ホロスコープから過去の出来事を正確に読み取ることができません。
わたしは拙著『Successful Predictive Techniques of Hindu Astrology』の第2部でリスキーなプレディクションを扱いました。そのなかで上記のような問題を、占星術で説明しながら解いていきました。とくに歌手であるサラユー・カーレーラカラ（सरयू कालेलकर）の事例では、誕生時刻が不明でした。別のもっと良い事例は、駐印フランス大使夫人のメリミーを扱った事例でした。
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