新刊書『ラオ先生の元同僚が書いたインド占星術の教科書~質問占星術:プラシュナ』
ペーパーバック(オンディマンド)の11冊目です。
Amazonでお求めになれます。
原本は『The Art of Prashna』です。
著者はKNラオも認めるプラシュナの第一人者、LCシャルマ。
翻訳本の表紙デザインはこのようになります。
A5サイズ
292ページ
占星術は遠大な学問です。占星術を解釈する方法は多種多様です。ヴェーダ占星術はその点に関してたいへん複雑で、たくさんのアプローチが存在します。出生図(誕生図)を扱う「ネータル」と呼ばれる一般的な方法とは別に、問いかけられた質問に答えるための「プラシュナ」、あるいはホラリーと呼ばれる方法が存在します。プラシュナの意味は「質問」です。プラシュナは、問いかけられた質問に対してどのように回答するかに関する占星術です。プラシュナでは、質問が問われた瞬間と場所をもとにホロスコープを作成し、それから回答を導き出します。プラシュナは、現時点の心的状況と周辺環境の間で起きるシンクロニシティ(共時性)のひとつの現れです。
プラシュナ・チャートは、ネータル・チャートと外形的に違うだけでなく、それを解釈するときに使われる法則も違います。プラシュナには独自の体系が存在し、それはネータル・チャートを分析するときに使われる体系と大きく異なります。たとえば、問われる質問の種類や、だれが質問するのか、だれに関する質問なのか、などでプラシュナにおける解釈の仕方やホロスコープを見るときの角度が変わってきます。
古代や中世の占星術家は、ネータルよりもホラリー(プラシュナ)を多用していました。相談者の誕生時刻が疑わしいとき、昔はそのようなことは当たり前でしたし、現代でもときどきそういうことがありますが、そのようなときはプラシュナ・チャートの方がネータル・チャートよりも正確で適切なプレディクションを導き出すことができます。この点に関して疑義をはさむ余地はなく、こういうときはプラシュナの方が信頼できます。
さらに言えば、ネータル・チャートを使って鑑定するときでさえ、占星術家は相談者から当然のこととして様々な質問を受けます。このような質問には、ネータル・チャートを隅々まで見渡して答えを探し出し、さらにその出現のタイミングを別の角度から検討するよりも、プラシュナを使って直接答えを出した方が簡単で正確なことが少なくありません。なぜなら、プラシュナは特定のテーマに直接光を照射します。それに対してネータル・チャートは、広範に光を当てて全体像を浮かび上がらせる一方で特定のテーマにピンポイントで光を照射することはできません。
プラシュナ・チャートのもうひとつ重要な方法は、相談者が鑑定者に会いに来たタイミングで作成したホロスコープをプラシュナ・チャートとして使用する方法です。これにより、焦点がさらに深く絞り込まれたリーディングが可能となり、相談者が抱える問題の本質のありかを特定できます。
しかし現代の占星術家は、プラシュナに相応の扱いをしてきませんでした。この傾向はとくに西洋において顕著で、西洋占星術では占星術はネータル・チャートを指します。現代の占星術家は、たとえどんなに優れていようとも、ネータル・チャートの方法だけでなく、プラシュナという深遠な体系についても学ぶべきです。プラシュナを使えば即興で答えを出すことができます。ネータル・チャートと一緒にプラシュナ・チャートを使うことで、鑑定精度を大きく上げることができます。プラシュナを使わないネータルの分析は、片翼を失った鳥と同じです。
プラシュナは、ネータルと同様にあらゆるテーマを扱うことができます。物質面から精神面まで、対象はほぼ無制限です。しかしひとつのプラシュナ・チャートはひとつのテーマに的を絞ります。プラシュナはこの点において、どちらかというとサイコロジーと解釈の仕方に依存しがちなネータル* よりも現実的です。プラシュナの名手は、ほとんどどんな問題に対しても有能な探偵になれます。失せ物のありかに関して有益な情報を提供できるし、職探しや結婚のプロポーズの結果を相談者に事前に知らせることもできます。医療占星術においてもプラシュナの役割は重要です。病気の重症度や回復の早さなどはプラシュナを使えばわかります。
プラシュナは、西洋占星術のホラリーと多くの面で共通しています。共通項の多さは、ヴェーダ占星術と西洋占星術のネータルにおけるよりも顕著です。ゆえに、プラシュナはヴェーダ占星術と西洋占星術の架け橋として位置づけることができます。西洋占星術とヴェーダ占星術の双方に興味のある人は両者の関係を知る上でプラシュナは格好の研究対象になるでしょう。
ヴェーダ占星術と西洋占星術の共通点をプラシュナに多く見いだすことができるのは、西インドにおいてプラシュナがより広範に使われ、ペルシャやアラビアの学者の間でも使われてきた事実からも理解できます。インドではプラシュナはタージカ占星術の一分野です。タージカという言葉は、タジキスタンに由来するとされています。タジキスタンはソビエト連邦の崩壊と同時に独立国になりましたが、もともとアフガニスタンの一部でした。そしてプラシュナはかつてアフガニスタンで発達し、そこで盛んになりました。アフガニスタンの他の地域がそうであったように、タージカ地方も歴史的に長い間インドの一部でした。そしていたるところで占星術が使われ、インド亜大陸と文化を共有し、独自の文化を発展させてきました。プラシュナは全インドで使われていますが、とくに南インドのケーララ州で盛んです。
西洋ではホラリー占星術はネータル占星術に比べてあまり注目されてきませんでした。そしてほとんど消滅しかかっていました。限られた占星術家だけが、それはインドでも同じですが、ホラリー占星術を使いこなしてきました。ほとんどの占星術家は、ホラリー占星術を使ったことすらありませんでした。同様に、インドでも最初にネータル占星術を学びます。この傾向は残念です。なぜなら、答えの結果をすぐに確認できるプラシュナは、占星術を学ぶ上で優位性があるからです。プラシュナから、ホロスコープを柔軟に見る姿勢を学び、多くの視点で現象を見る方法を学ぶことができます。
プラシュナは、もっとも人を魅了させる占星術の一分野です。プラシュナの専門家は、多くの問題をプラシュナを使って解決していくなかで、自分だけの楽しみを密かに見いだしています。
インド占星術の学習者の多くは、プラシュナの重要性に少しずつ気づいていくでしょう。プラシュナに対して関心が高まると、プラシュナの新たな本の需要が高まり、解説がより求められるようになります。この需要ギャップを満たす意味でも、本書が世に出る意義は大きいと言えます。
本書は、ヴェーダ占星術の蔵書のプラシュナに関する文献群に新たに加わる重要な一冊となるでしょう。そして西洋に住む人々にとって、ヴェーダ占星術に関する最もわかりやすい一冊です。本書は、おどろくほどやさしく、そして体系的に書かれています。この重要ですが見落とされがちな分野を真剣に学ぼうとする人たちは、本書を教科書として重用するでしょう。本書は、容易に、簡潔に、そして論点がつねに明確になるように書かれてあります。本書の読者は、基礎をしっかりかためながらも、同時にプラシュナの持つ多面的で細かなニュアンスについても漏らさずに把握することができるでしょう。
本書は、古典籍にしっかり根を下ろしながらも、現代の文脈に沿って説明されています。そしてなによりも重要なことに、多くの事例解説で使われているホロスコープを通して読者はプラシュナの具体的な運用を目のあたりにすることができます。重要な法則のほとんどは、事例のなかで詳細に示されています。
JNシャルマジは、知識と経験が豊かな、デリーの高名な占星術家です。JNシャルマジはプラシュナの専門家のなかで最も偉大な一人です。
本書は、高名なヴェーダ占星術家で、西洋でヴェーダ占星術を長年教えてきたKSチャラクジが編集しました。KSチャラクジは外科医が本業ですが、ヴェーダ占星術の先生であり、多くの本をこれまでに出版してきました。KSチャラクジはヴェーダ・サイエンス全般についても幅広い知識を有しています。KSチャラクジはヴェーダ占星術のルネッサンスにおいて重要な役割を果たし、世界中にヴェーダ占星術を広める役目を担っています。
両者の努力により、唯一無二で完璧な本書が誕生しました。プラシュナに興味のある人、実際にはヴェーダ占星術に関心のある人はすべて、重要で詳細なこの本を読むべきです。そして読者の多くが、本書はプラシュナに関する最良の書であると思うでしょう。
2022年1月14日
デヴィッド・フローリー
Director, American Institute of Vedic Studies
本書の著者J. N.シャルマと編集者Dr. K.S.チャラクは1990年代にバーラティーヤ・ヴィディヤー・バヴァンで占星術を教えていました。その後、二人はそれぞれの事情でバーラティーヤ・ヴィディヤー・バヴァンを去り、やはりバーラティーヤ・ヴィディヤー・バヴァンを辞めたヴィネイ・アディチャと合流し、占星術雑誌の出版、占星術コースでの教鞭、そしてアドホックなセミナーの開催などを長年にわたって行ってきました。訳者は、かれら三名が2005年にヒマラヤの避暑地ナイニータルで開催した5日間の占星術セミナーに参加したことがあります。そのときに訳者は、著者J. N.シャルマから直接プラシュナの講義を受ける機会に恵まれました。J. N.シャルマはヒンディー語で講義をし、本書の編者K.S.チャラクジが逐次通訳をするという形式で行われました。そのときの講義で扱われた事例が本書に多く盛り込まれてあり、当時の講義をより完全なかたちで再受講しているような気分で本書の翻訳を訳者は進めることができました。
著者の友人デヴィッド・フローリーは本書のまえがきで「インドでも最初にネータル占星術を学びます。この傾向は残念です。なぜなら、答えの結果をすぐに確認できるプラシュナは、占星術を学ぶ上で優位性があるからです。」と書いています。パーラーシャラ占星術よりもプラシュナに優位性があるので、パーラーシャラに先がけてプラシュナを学ぶできであるという立場です。たしかに、それには一理あります。パーラーシャラ占星術では分割図もダシャーも使わないといけません。分割図を使うには、時刻修正が必要です。しかしプラシュナでは基本的にラーシ(D1)だけで十分ですし、時刻修正の必要もありません。それでいて、ネータル・チャートではわからない細部までもわかることがあります。つまり、パーラーシャラ占星術にくらべて簡単な上に、より詳細で具体的なリーディングも可能なのがプラシュナです。であれば、プラシュナを優先して学ばない理由がないだろう、となります。
しかし、プラシュナにも、本書では述べられていない欠点があります。ひとつは、プラシュナは質問が前提です。質問されていない問題について検討することができません。次に、質問は正しく行われなければいけません。そして質問は、真剣にまじめに行われなければいけません。ひやかしの質問には正しい答えは得られません。そして質問に対する回答は、いちおう有効期限があり、それはだいたい1年間です。1年以上先の未来や人生全般にわたって何が起こるかみたいなことについては、プラシュナで見ることができません。それは、ネータル・チャートでしかわかり得ません。そして最後にもうひとつ、最大の欠点は、プラシュナを使いすぎると、ネータル・チャートを使う際の分析の腕が鈍ってくるということです。だから、わたしの師匠K.N.ラオはかれの生徒に対して「プラシュナは必要なとき以外は使うな」と助言してきました。それはK.N.ラオ自身の経験から出た警告でした。時間がなかなかとれないときにK.N.ラオはプラシュナを多用していましたが、あるときパーラーシャラ占星術の腕が鈍ってしまったことに気づきました。それ以来、プラシュナの使用を避けるようになったという経験談を、わたしは何度も直接K.N.ラオから聞いてきました。そのことをここで読者にシェアさせて頂くのは、読者の利益に叶うのではないかと思います。
とはいっても、著者はデリーでおそらくナンバーワンのプラシュナの使い手です。その高い評判は、K.N.ラオからも訳者は聞いてきました。やはりリーディングを的中させることのできる本物の占星術家が書いた本は違う、と訳者がうなりながら短時間で翻訳をした本書は、読者にとっても多大な利益をもたらすことは間違いありません。
2022年9月5日
清水俊介
(以上、敬称を略させて頂きました)
これまでに出版したペーパーバック
①ラオ先生のやさしいインド占星術~入門編~
88回の無料動画講座はこの本に沿って進みます。
②ラオ先生のやさしいインド占星術~基礎知識編~
入門編を終えたら、この基礎知識編でさらにインド占星術の機微を学んでください。
とくに『ラグ・パラシャリ』と『マッディヤ・パラシャリ』の部分は何度も読み返して覚えてください。
③ラオ先生が書いたインド占星術の教科書~ヴィムショッタリー・ダシャーが明かす人生のタイムライン
『入門編』と『基礎知識編』にはダシャーの解説がやや不足しています。
ダシャーはインド占星術で最も重要な要素ですが、本書でダシャーについて詳しく学びましょう。
④ラオ先生が書いたインド占星術の教科書~ダブル・トランジットが明かすキャリアの浮き沈み
ダシャーにトランジットを併用することで出来事が起きるタイミングを予測する精度が大きく向上します。トランジットの技法のなかで最も重要なダブル・トランジットについて多くの事例を用いながら詳しく解説しています。
⑤ラオ先生が書いたインド占星術の教科書~占星術が明かすカルマと輪廻転生
スピリチュアル占星術に関する本です。
スピリチュアル占星術がカバーする分野は、1)カルマ、2)生まれ変わり、3)ヨーギー(修行)の3つがあるとされ、本書は1)と2)を扱います。
⑥ラオ先生が書いたインド占星術の教科書~ジェイミニのチャラ&マンドゥーク・ダシャー
ジェイミニ占星術の入門書。
高い精度の鑑定をしたければ、パーラーシャラとジェイミニの併用、すなわちコンポジット・メソッドを採用しましょう。このテキストは、ジェミニ占星術を学ぶ上での最良の教科書です。
⑦ラオ先生が書いたインド占星術の教科書~占星術が明かす妊娠と出産のカルマ
⑧ラオ先生が書いたインド占星術の教科書~選択占星術 ムフールタ
⑨ラオ先生の弟子が書いたインド占星術の教科書~占星術が明かす教育の適性と進路
⑩ラオ先生の元弟子が書いたインド占星術の教科書~ソーラーリターン:ヴァルシャファラ
お知らせ1:「お悩み相談ライブWEBセミナー」
日 :2022年9月10日(土)
時 :午後8時
方法:ZOOM
できるだけ皆様のご質問ひとつひとつにお答えしたいと思います。
参加希望者は、アンケートにご記入ください。
お申し込み(アンケートフォーム)
定員がございますので、できるだけお早めにお願いします。
お知らせ2:「ゼロから始めるインド占星術」22期
9月18日に「ゼロから始めるインド占星術」(22期)を開講します。
年に2回しか募集をしません。
なぜなら
料理にたとえるなら、フルコースだからです。
(フレンチではなく、インディアンですけど…)
回転数で稼ぐ立ち食い蕎麦とは違います。
まして、いつでも買えるコンビニ弁当と比較しないでください。
2021年の19期と20期では、
60時間の本講座(ZOOM)の他に
30時間のワーク(ZOOM)を追加し、好評です。
今期(22期)でも続けます。
本講義でインプットし、ワークでアウトプットする。
これを30回以上、延べ90時間以上繰り返す。
そうすることでアウトプットを意識してインプットできるようになる。
学習を体験化する試みは順調に成果を上げております。
22期生の募集ページはここからどうぞ
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。