写真は、2010年の講義ノート。
11室がもたらす結果に関する事例が、一冊丸ごとぎっしり書き込まれています。
この年、KNラオが担当するシニア・リサーチ・クラスのテーマは11室でした。
わたしは昭和天皇と東条英機のホロスコープにおける11室の役割についてクラスと学内の発表会でプレゼンしました。
今回から数回にわたって紹介するシリーズでは、そのリサーチの成果が発表された“Journal of Astrology“から関連記事のエッセンスを紹介します。
11室に関するリサーチの当事者のひとりだったわたしは、半分なつかしい気持ちで当時の記憶をたどりながら書いています。
11室の意味
スピリチュアル占星術において、ホロスコープの1室から12室まではいわば双六(すごろく)と同じです。
1室から始まる精神性の旅は、12室で上がりをむかえます。
12室はモークシャバーヴァ(मोक्ष भाव)、つまり解脱のハウスです。
そしてそのひとつ前の11室は、最後の難関、罠が仕掛けられたハウスです。
11室でつまずくと、へたをすると振り出しに戻るというどんでん返しが待ち受けています。
しかし1室から10室までの総決算のハウスでもある11室は、大きな成功と繁栄をもたらします。
そう、11室を通過して12室にいたるプロセスは、釈尊の降魔成道のエピソードに似ていなくもありません。
「傷ついた11室は高い精神性をもたらすことがある」
KNラオがそういう理由は、ここにあるのでしょう。
しかしそういうすこしひねりのきいたはなしは別の機会に譲るとして、今回は11室がもたらす成功と繁栄というどまんなかのテーマについて、リサーチの成果をすこし紹介します。
まずは古典から
プロセスは無視され、結果だけが求められるカリユガの現代、11室が果たす役割は重要です。
まずは11室の象意を『ブリハット・パーラーシャラ・ホーラー・シャーストラ』から引用しましょう。
11室:種々の事物、息子の妻、収入、繁栄、四つ足動物(家畜)。
思いのほか11室に関する記述は少ないですね。
では『Phaladeepika』を紐解いてみましょう。
11室:獲得、収入、受領、実現(達成)、富、福利、賞賛、兄・姉、左耳、光沢、良い知らせなど。
念のため、サンスクリット語学者 P.S.Sastri のテキストからも引用しておきましょう。
あらゆる獲得、悪意、あらゆる収入、他者への依存、兄、父方の叔父、神への礼拝、神仏への礼拝、教育、財貨を稼ぐスキル、先祖の遺産、膝、特別の地位、装飾品への愛情、富、失われた財貨、芸術や女性のために装飾品を探し求める行為、智慧、大臣、妻の兄弟、利益、運気上昇、願望成就、容易で大きなリターン、料理、願望、母の寿命、耳、絵画のスキルなど。
なるほどー。
では、何室の支配星が11室に在住するときにどういう解釈が成り立つのか?
『ブリハット・パーラーシャラ・ホーラー・シャーストラ』から引用しましょう。
なお、以下の文中の「○L」は○室の支配星、「○H」は○室を意味します。
したがいまして、「1L in 11H」は「1室の支配星が11室に在住する」という意味になります。
1L in 11H:利益を得て、資質に恵まれ、有名で、多くの妻をめとる。
2L in 11H:ありとあらゆる富と利益を得て、よく働き、名誉と名声を得る。
3L in 11H:交易で利益を得て、無教養でも賢く、冒険を好み、人に仕える。
4L in 11H:秘密の病気を恐れおののき、進歩的で、有徳で、慈善的で、人助けをする。
5L in 11H:教養があり、人にやさしく、説得力のある文章を書き、器用で、多くの息子と富に恵まれる。
6L in 11H:敵から利益を得る、有徳で、冒険を好み、栄誉に浴し、子供から得られる幸福は薄い。
7L in 11H:妻のおかげで裕福になる、息子からえられる幸福は少なく、息子より娘が多く生まれる。
8L in 11H:青年期は困窮して惨めでだが、人生後半は幸せになる、もし8室の支配星が吉星とコンジャンクトするなら、長生きする。
9L in 11H:日々の収入があり、先生(師)に仕え、徳が有り、慈善活動に従事する。
10L in 11H:富と息子に恵まれ、幸せで、誠実で、いつも明るく、徳がある。
11L in 11H:なにをてがけても結果を出し、教養と幸福は日を追って増していく。
12L in 11H:損を出す、得られるはずだった利益が得られない、他人の富から薄利を得る。
(つづく)
※著作物から要約・引用するにあたり、わたしはラオ先生との間で契約を交わしております。