疑似科学とのそしりを長い間受けてきた心理学。
現代、その教科書の多くには、科学の定義が書かれてあるそうです。
以下、「科学と疑似科学、心理学と議事心理学、治療と議事治療:音楽療法の評価」(上田和夫、京都府立大学)から引用します。
「現在世界的に通用している心理学の教科書には、最初の方に必ず科学の定義が書かれている」
「科学が満たすべき要件とは次のようなものである。(1)経験主義、(2)無矛盾性、(3)公共客観性。」
「経験主義とは、単なる推測や直感に頼るのではなく、経験的事実から新しい知識を得て、それを基礎に論を進めることを意味する。」
「無矛盾性とは、それまでに得られた知識(法則)と新しい知識が論理体系内で矛盾しないことを意味する。」
「公共客観性とは、経験的事実を得る手続きが明白で、その事実が他者に再現できることを意味する。」
これを占星術にあてはめると、すくなくともインド占星術の場合、けっこう当てはまるように思えます。
たとえば、インド占星術における経験主義の例といえば、子供の誕生です。
1)子供が誕生するとき、木星、土星、太陽、火星、月が、一定の期間内にホロスコープの5室あるいはその支配星にアスペクトするという現象は、世界で多くの占星術家によって確認されるところです。これをトランジットの法則と呼ぶとします。
2)また、子供が生まれる現象は、他の技法によっても確認されます。たとえば、ダシャーと呼ばれる技法を使っても、5室やその支配星に絡む惑星に支配されるダシャーにおいて子供が誕生し、そのことは世界で多くの占星術家によって確認されています。これをダシャーの法則と呼ぶことにします。
トランジットの法則もダシャーの法則も、経験的事実からえられた知見です。
もちろんそのヒントは古典のなかにありました。
無矛盾性についていうなら、トランジットの法則もダシャーの法則から導き出される子供の誕生という現象(経験)は、ほぼ同じ時期に発生し、両方の法則が矛盾しないことがが確認されています。
実際、トランジットの法則 も ダシャーの法則と矛盾しないばかりか、むしろそれぞれの法則が示す子供誕生のタイミングの予測の確信度をかえって高める働きをしています。
次に公共客観性についていうなら、そもそもトランジットの法則 も ダシャーの法則 も、だれがやっても子供の誕生の予測に使えることが確認されており、その再現性は、すくなくともインド占星術を理解し実践する人ならば、確認できます。
しかもそれはインドだけでなく、欧州や米国、日本においても確認されています。
というわけで、心理占星術とは一線を画し、イベントの発生の予測に威力を発揮するインド占星術は、経験主義により即しているがゆえに、科学との親和性がより高い可能性があろうかといえそうです。