古典と外国
外国といえば12室、ラーフ、ケートゥを連想するのが普通です。
しかし主要な古典を紐解くと、外国という言葉はどこにもでてきません。
すべての古典に目を通したわけでないので断言しませんが、わたしが知る限り、いわゆる解釈のモダナイゼーションの結果、外国という象意が、12室、ラーフ、ケートゥに配当されるようになったのであろうと思われます。
そして、そのモダナイゼーションのプロセスおけるラオ先生の役割は小さくなかったであろうと思われます。
むかしインドでは外国渡航は忌み嫌われていた
かつてインドでは国を離れることは忌み嫌われていました。
インド初代首相ネルーは英国留学を終えて帰国したとき、禊(みそ)ぎを終えるまでかれが属するコミュニティーに入れてもらえなかったそうです。
日々の宗教儀式は外国ではできないし、外国での食事もサットヴァではないからでした。
母国を長い期間離れていたJLネルーは、よそ者扱いされました。
12室には移動、ラーフとケートゥにはよそ者という意味があります。
今回のシリーズでは、外国を訪れる傾向の強い人のホロスコープの特徴、そして外国に渡航するタイミング(ダシャー)に関する知見を、JOA(Journal of Astrology)から紹介します。
出典
記事:”Planets Take Tem Across the Sea -I” Journal of Astrology, January-March 2002, pp19-22.
著者:K.N.Rao & Minakshi Raut


海外旅行の種類
かつてインドで忌み嫌われていた外国渡航は、現代では成功と繁栄のチャンスとして、インドの若者のあいだで羨望の眼差しで見られています。
外国に渡航する目的は、一般に次のようなものがあります。
- 仕事
- 留学・研修
- 移住
- 治療
- 結婚(外国に住むインド人男性に嫁ぐため)
5回にわたってそれぞれの事例を紹介していきます。
事例1
最初の事例は名優アミターバ・バッチャン(左)の弟アジターブ・バッチャン(右)のホロスコープです。

1989年から2001年にかけて経済事件のスキャンダルに巻き込まれていたアジターブ・バッチャン(右)は、スキャンダルの渦中から逃れようとスイスの市民権を取得し、スイスに物件も取得したと報道されています。
はたしてその報道は真実なのかどうか、検証していきましょう。


ホロスコープの特徴は以下の通りです。
- 10室を支配する土星は3室に在住し、12室を支配する火星にアスペクトされています。
- 一般に、ラーフ、月、そして7室と9室、12室に在住する惑星は外国と関係します。これらのハウスの支配星も外国への関心を強めます。
- アジターバ・バッチャンは月のダシャーに外国とのコネクションが強まりました。11室に在住する月は何かの取得を表します。月は水の惑星です。在住する魚座も水の星座です。1981年に始まった月のダシャーにアジターバ・バッチャンが海外渡航する頻度が増えました。
- 月のディスポジターは木星です。木星は6室に在住し、カルマスターナの10室と12室にアスペクトしています。これらはすべて外国との縁をさらに深めています。
- これらが示す外国との縁はすべて配偶者とも直接関係します。7室を支配する火星は12室に在住しています。
以上のポイントはダシャマーンシャ(D10)でも検証する必要があります。
他のホロスコープでも検証しましたが、省略します。
結論:アジターバ・バッチャンは外国から収入を得ているはずだし、外国に不動産も所有しているはずです。
(つづく)
※著作物から要約・引用するにあたり、わたしはラオ先生との間で契約を交わしております。